1. 質量流量計とは
質量流量計とは、温度・圧力を加味した質量測定ができる方法として「厳密な計測」や「ガスなど圧縮性流体用途」に近年急激に普及してきている比較的新しい測定原理を使ったものです。質量流量計を大きく分けると、コリオリ式と熱式に大別することができます。ここでは主に蒸気を除くガスの流量計測で用いられる熱式の質量流量計、およびアズビルのフローセンサ式の質量流量計について解説します。
熱式 質量流量計の歴史と展望
意外とその歴史は浅く、NASAのロケット開発の試験研究用途が発祥とされています。その後、半導体製造産業の急激な成長に伴い、拡散炉など半導体の成膜工程においてめざましい発展をとげました。近年では、工場の省エネルギーを目的とした原単位管理、適正使用量管理、課別管理をはじめ燃料電池・医療・バイオ等の試験研究、ガスの商取引、病院内ガスの使用量管理など、適用領域が急速に拡大しつつあります。
熱式流量計の原理
熱式流量計の原理を原理式から説明すると難しくなりますが、簡単に言うと「ガスが持つ熱拡散作用を用いて流量測定する原理」ということです。ガスの圧縮度合いにより伝播する熱量が変化するためセンサそのものが質量流量に比例した出力特性を持つからです。
ガスは圧縮性流体であるため、従来から馴染み深い体積流量計においては、正確な計測のためにはボイルシャルル式による温度・圧力補正が必要でした。その点、熱式質量流量計において、基準流量により調整されたものは、高精度に質量流量測定が可能です。
2. 熱式 質量流量計とは
熱式の質量流量計を計測センサ別に層別すると主に⑴ キャピラリ式、⑵ 熱線式、⑶ 熱電対式、⑷ MEMS式(フローセンサ式)に分類されます。
(1) キャピラリ式
層流素子と呼ばれる整流部分にバイパス流路を設けて流量測定するいわば「推測式測定法」のことです。熱式流量計では一番多く見られる原理で、半導体製造工程のガスのコントロールに多く用いられています。
特徴としては、ガスとセンサ部分は直接流体に接触しないため、腐食性ガスの測定が可能で、電解研磨などガス接触面の清浄化処理を施すことができます。一方、層流素子は大きな圧力損失をもつため低圧ガスの計測はできません。また、キャピラリ部とメイン部分の比率が一定条件下で精度維持できるものであるため、一次圧力が大きく変化した場合は圧力特性が大きくなる欠点もあります。
(2) 熱線式
管内に設けられた、熱線(ヒータ部)と温度センサにより流速測定を行います。整流機構が必要なため、従来は直管部が長いとされていましたが、金網などの整流機構内蔵形が開発されたことで、直管部が不要なものも登場しています。比較的高流速域の計測が得意であり、圧縮空気や窒素など配管口径に対し流速が高いガスの測定に数多く使用されています。
(3) 熱電対式(サーモパイル式)
文字通り熱電対の温度変化のみを測定する原理です。比較的高流速域での測定が多く、前出のキャピラリ式同様の構造にセンサ部のみを熱電対を直接挿入して計測する方式が多く見られます。高流速、大流測定用途に多く採用されています。
(4) MEMS式(フローセンサ式)
熱式の中では最も新しい方式です。センサ部分をシリコンウエハから形成されたMEMS式フローセンサにより、熱容量を小さく抑えることで、計測範囲が熱式の中でもさらに広く従来不得意とされてきた極低圧のガスの計測が可能な原理です。また、原理的に双方向流量測定が可能で、電池駆動も可能なほど消費電力が小さいという特徴を持っています。