HART通信の基礎知識

HART通信とは?

HART通信とは?
  • HART通信とは、アナログ伝送における統一信号として広く使用されているDC4~20mA信号に、デジタル信号を重畳し、多数の信号を伝送する方式です。
     
  • 従来の制御信号、配線をそのまま活用して、HART通信対応フィールド機器の持つさまざまな情報(複数のプロセス計測情報、自己診断など)をホストに送ることができます。
     

HARTコマンドの種類

HARTホストとHART機器間でやりとりされるコマンドには、以下のように「ユニバーサル」、「コモンプラクティス」、「デバイススペシフィック」などの種類があります。  

     
ユニバーサル コモンプラクティスデバイススペシフィック
内容 全てのHART機器で実行が必要なコマンド 全てではないが、多くのHART機器で実行が望ましいとされているコマンド機器固有の診断機能など、メーカ個別の対応が許されているコマンド
意味 機器管理上、最低限必要な情報 ユーザにとってメリットのある情報機器の強みとなる情報
機器基本情報の取得(TAG、機器タイプなど)、機器の持つ4変数(PV,SV,TV,QV)の取得 機器レンジの書き込み、電流出力指示、リセット バルブ診断など

HART変数について

HART変数について

HART通信機器は主変量以外に複数の計測値(Dynamic変数=HART変数)を持っています。上位ホストからHART通信機器にHARTコマンドを送ると、ベンダーを問わずHART変数を取得できます。
 

コマンド 内容 備考
Command 3 PV,SV,TV,QVの4変数と単位(+電流値)を取得 全てのHART通信機器がサポート、変数マッピングはベンダ依存、後からマッピングを変更できる機器もある           
Command 9 最大8個までの変数と単位を取得 バージョン7以上の全てのHART通信機器がサポート
Command 33 Command 9で取得する8変数のうち任意の4変数 サポートしてない機器あり

診断機能付きのHART機器の場合、一般的なHART機器よりもHART変数が多く、HART機器の健康状態の把握に有効です。
 

HART機器 一般的なHART機器の変数 診断機能付きHART機器の変数
差圧発信器/圧力発信器 差圧、静圧、デバイス温度 差圧、静圧、デバイス温度、変動周波数 など
コリオリ式流量計 質量流量、密度、温度、積算値、デバイス温度 質量流量、密度、温度、積算値、デバイス温度、振動回数 など
スマート・バルブ・ポジショナ 実開度、デバイス温度、偏差 実開度、デバイス温度、偏差、動作距離積算、閉位置 など
pH計 pH値、電極抵抗、参照抵抗、液温度 pH値、電極抵抗、参照抵抗、液温度、予測寿命日数、通算利用時間 など

アズビルの代表的なHART通信機器が提供するHART変数

(例) Command3を利用する場合

製品名 形番 HART Ver. PV SV TV QV
差圧発信器/圧力発信器 JTD9□□,JTG9□□, JTA9□□, JTC9□□, JTE9□□, JTH9□□, JTS9□□, GTX□□, PTG□□ HART5 圧力 基板温度  
電磁流量計/2線式電磁流量計 MGG□□□,MTG11□,MTG15A HART5 流量  
マルチバリアブル式渦流量計 AX2□□□ HART5 自由に設定変更可能

HART通信機器

代表的なHART通信機器は主にフィールド機器とシステム製品があります。
 

アズビルの対応機器の参考例


【フィールド機器】
・ ポジショナ
・ 差圧発信器・圧力発信器
・ 電磁流量計
・ 温度発信器

【システム製品】
・ HART通信対応I/O
・ 機器メンテナンス用のシステム、コミュニケータ

FieldComm Group登録済のHART通信機器は、メーカに関係なく、相互の運用性が保証されます。 
 
参照: FieldComm Group

HARTモデムとは?

HARTモデムとは?

  • HART機器の持つ各種パラメータの設定・調整・確認を行う際に用いる通信インターフェースです。
     
  • 一般的なものは、HARTホスト側のUSB端子と現場機器側の端子を接続します。
     

HARTモデムの使い方

HARTモデムの使い方
  • 調整や設定を確認したいHART通信機器の端子とHARTモデムに接続すれば、コミュニケータを通して調整や設定が簡単にできます。
     

アズビルのHARTモデム

アズビルのHARTモデム
  • アズビルのHARTモデムは、HART機器の設定・調整作業時の「あったらいいな」をHARTモデム内に集約した新発想のHARTモデムです。単なる通信インターフェイスとしてだけではなくHART機器のフィールドサービスツールとしてお使いいただけます。